遠くの人とビデオ通話で済ませるうちに
距離感がわからなくなって
でもこのままの日常がふつうになって めくれていく日々
街へ出れば
ここは戦場ではないけれど
見えない流れ弾の中を突っ切っていく気分
すでに誰もがささくれだっている
気がつけばもう夏は終わっていた
猛暑で焼けた街灯のてっぺんで存在感を増す火星
〈お疲れ様〉 と背中で閉まる電車のドアから
人々のやさしさは限りなく流れ出てしまった
深夜
スパークリングワインの瓶を片付け
マスクで少し荒れてる耳と頬にそっとクリームを塗る
明日の朝 目覚めれば
ぜんぶ夢だった、にはならない